序章
【ナガスギル前奏曲】
みなさんはじめまして。ゴーシュ音楽院スタッフの鈴木と申します。音楽院では主に事務方や営業を担当しております。
生徒さんからはときどき「先生」と呼ばれてしまうのですが、音楽教室に勤務していながら、残念なことに私自身は楽器演奏の知識はほとんどございません。
妹が数年間ピアノを習っていたので自宅にはエレクトリックピアノがありましたが、私はまったくのスルー。
学生時代はバンドブームでエレキギターなど手にとってみましたが、Fコードが指が痛くて押さえられず、だいたいそのあたりで何度も何度も挫折して、もう自分には楽器の才能はないのだな… と決断を下してしまいました。
学校の音楽の時間では、複雑で面倒な楽譜の仕組みはほとんど頭に残りませんでしたし、鑑賞の時間はいつも昼下がりのまどろみの中にいましたのであまり記憶にありません。
ただ、スメタナの『モルダウ』とか、ショパンの『別れの曲』などは青春の青い何かをくすぐられるようで、なぜか好きでした。
そんな具合なので、うちに入会して頂いた生徒さんたちのほうがよっぽど「先輩」なのですね。
ただ音楽を聴くことは大好きで、ポップスやロックからアイリッシュやタンゴ、ブラジルなど民族音楽、またヨーロッパ映画も好きなのでその影響もあったかもしれません。
ここ10年くらい前に坂本龍一さんの室内楽のアルバムを聴いたあたりから、いわゆるポスト・クラシック的なものも聴くようになり、逆にドビュッシー、バッハと古いものへの興味の幅も広がってゆきました。
「いつかは楽器を…」という淡い思いは持っておりましたが、何となく日常の中でチャレンジする気持ちの余裕がなく、練習に耐える自信もなく(なにせFの壁のトラウマが…)、どんどんと先延ばしにしてきてしまいました。
そんな私がゴーシュ音楽院に勤めはじめ、先日ついに、院長・大友裕子先生より指令が下されました。 「春のキャンペーンがはじまりますから、ピアノを習ってレポートしてくださいねっ♪」 ・・・・・・・。
えええーっ! ピピピピアノ?!
もちろんチェロ、ピアノ、フルートほかいろいろな楽器に興味自体はありましたし、中でも好きなアーティストも多いので憧れのピアノではあったのです。 ですので願ったり叶ったりではあるのですが、自分の才能から最も遠そうなピアノという選択を与えられたことで、右手と左手が同時に動くだろうか? つったりして挫折しないだろうか? とかいう大きな不安も同時に渦巻いております。なにせ過去にはFの壁が…。 この春のキャンペーン、すでに「3ヵ月で1曲弾こう!」と掲げてしまっております。こうなったらやってみるしかない。 100%初心者のわたくし、四十半ばの男一匹に下されたこのミッション、果たしてクリアーできるか?! まあこのコーナーを「本気(マジ)修業」と名付けてはしまいましたが、生徒のみなさんには日ごろお伝えしているように、「楽しんで」私の1曲を目指したいと思います。 これから3ヵ月間9回のレッスンのご報告にお付き合いいただけたらと思います。 どうぞ温かいまなざしで見守ってくださいますよう、みなさまよろしくお願いいたします。
さて。 これより人生初のピアノレッスンがスタートします。